海を渡る狼/竹森
ないでくれ―――。
海面が
盛り上がる
大波だ
いや
違う
これは
・・・鯨?
風が吹く
風 というよりも
鯨の出現によって
押しのけられた空間だった
そして それは 僕の瞳を乾かすには
十分すぎる程の 風圧で・・・
「さようなら―――」
「嫌だ、行かないで!」
―――――――・・・・(波の、音)。
海面に折り重なった波の一つ一つは
疲れ果てた僕の 顔のしわの様だった
僕は自分の顔に触れ 刻まれたしわの数を、
積み重ねてきた年月を、 数え上げてみた。
すると 涙が溢
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)