海を渡る狼/竹森
 
ないでくれ―――。

海面が

盛り上がる

大波だ

いや

違う

これは

・・・鯨?

風が吹く

風 というよりも
鯨の出現によって
押しのけられた空間だった

そして それは 僕の瞳を乾かすには
十分すぎる程の 風圧で・・・

「さようなら―――」

「嫌だ、行かないで!」



―――――――・・・・(波の、音)。






海面に折り重なった波の一つ一つは
疲れ果てた僕の 顔のしわの様だった

僕は自分の顔に触れ 刻まれたしわの数を、
積み重ねてきた年月を、 数え上げてみた。

すると 涙が溢
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