海を渡る狼/竹森
 
らこそ、同じ空を飛ぶ白鳥を見つけられる。
狼はどうだろう。海を渡る狼。狼は染まらない。
海を渡る狼が、同じ海を渡る狼と出会う事はあるのだろうか?
きっと、もう二度と陸地には戻れない旅路。
いや、海を一度でも渡ろうとする狼ならば、
奇跡的に陸地に戻れたとしても、また、
何度でも、何度でも、海を渡ろうとする事だろう。
彼の心臓が太陽を求める限り。
彼の孤独が北極星を求める限り。

もしかしたら、この太平洋は、一滴の青酸カリを、
薄めて無力化する為だけに存在しているのかもしれない。
つまりは、一匹の狼を、殺す為だけに。

それがもう、
悲しくて、悲しくて、仕方がなくて、

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