冷えていく鉄/木屋 亞万
 
」とか主張するものはなかった。彼らは家電であり、電化製品だった。再利用や使用倫理の話になるときはあっても、そこに人格を見出すものはなかった。
ロボットは充電するたびに、その体の中央に熱がみなぎるのを感じた。ロボットはその熱が命が宿り始めている証なのだと信じ始めるようになった。
ロボは恋に憧れていた。誰の相談を聴いても、その対象に恋愛感情を発生させることができなかった。その虚しさとも、焦りとも、もうすぐ別れなのだ。終わりの見えないロボット生活が終わり、終わりのある命をもって日々を過ごすのだ。
百年まであと少し、命を宿らせるための儀式を考えた。すこし長く充電してみたり、あえて熱くなる体を冷却せず
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