冷えていく鉄/木屋 亞万
バッテリーは少しずつ擦り減っていった。でもバッテリーを交換すれば、その消耗は補充できた。体内の歯車機構やボディーが傷むたびに、記憶のバックアップを取ってオーバーホールと検査を受けた。
当然家族はなく、愛も恋を知らなかった。目の前を行き交う人間たちが、その楽しさや喜びをありありと見せつけ、電子頭脳に学習させるのに、ロボットはその良さを享受することができなかった。人間どもが漏らす、人生の恨み妬みをロボットはカウンセリングしたが、ロボットの孤独を聴く者はなかった。ロボットが孤独を感じるなど、ちゃんちゃらおかしいと思うものの方が多かっただろう。「ロボットが差別されている」とか、「ロボットにも権利を!」と
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