A sheep flies/猫の耳
 
 泣いてばかりいたら、心が水分を失くして、カサカサに乾いてしまった。
 冷たい風が吹いてきて、乾いた心を粉々に吹き飛ばしてしまった。
「寒いよ。胸がスース―するよ」
 誰か助けてと、座り込み膝を抱え震えていたら、何かがゴンとぶつかってきた。
 顔を上げると、まあるく太った羊がめえと鳴いて、身体を押し付けている。
「いつの間に?どこから来たの?」
「僕?さあ?」
 羊は空を仰いだ。
「もしかして、本当に雲とか?」
「まあそんなもんですかね」
 羊は首を傾げた。
 私は冷えた心と身体を、羊に摺り寄せてみた。案外、ゴワゴワして肌触りが悪い。
「あんまり優しくないね」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)