救急室3/オダ カズヒコ
 
ベットに横たえた体から全部の力を抜き、このまま眠ることにした。

どのくらい眠っただろうか?

五分か十分くらいのことかもしれない。
隣のベットからうめき声が聞こえはじめたのだ。

その声からすると五十代くらいの、中年の女性のものと思われる。カーテン越しに光を透かしてみると、微かに見える影から、女性は点滴をしていることがわかる。さっきまで考えもしなかったが。この病室にいるのは、どうやらぼくだけではなさそうだ。さらにその向こう側のベットからは、若い女性が嘔吐いているのが聞こえた。

なるほど、人間、そう簡単にひとりになれるものではないな。ぼくは妙に納得した。人は、たとえどんな境遇や
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