救急室3/オダ カズヒコ
 
かれていた。

その紙切れをもらうと、ぼくは何故かホッとした。

問診票を受付に提出した後、内科の診察室の前に置いてある黒いレザー貼りの長椅子に腰をかけ、病院内を観察しはじめた。足取りの覚束ないヨボヨボの爺さんが、さっきから内科の前をウロウロし、女性の看護師に声をかけては「今日は下痢が酷い」と訴えている。“今日は”と、いったところ、おそらく毎日通ってくる、病院しか行くところのない“困った爺さん”なのだろう。困った爺さんは、また違う看護師を掴まえては“病状”を訴えて回っている。

「下痢をされているんですね。大丈夫ですよ」

その一言をもらうと爺さんは安心したのか、内科の前をうろつく
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