そのとき光の旅がはじまる/yo-yo
 

光の旅をする
 
冷たい線路に
小さな耳を押しあてる
聞こえるのは遠くの声ばかり
鉄のことばは風のことばに似ていた
近づいてくるのか遠ざかっていくのか
耳の風景がさまよっている

どこかで
音と音が連結する
やがて音は山と山を連結する
山と空を連結する
ときどき山が近づいてくる
大きな背中のような原生林を駆けぬけて
ふたたび山の音が返ってくる
日なたの匂いが満ちる

貨物列車の長い鼓動が
夢の淵をわたる
だれかが山を運んでいるみたい
夜のうちに山が海になったらどうなるのか
つぎつぎに虹色のビー玉を転がしつづける
ガラスの風景はすばやく変わるので

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