今夜は何を召し上がりたい?/木屋 亞万
。やはり刃物で殺すべきだったと何度も後悔した。泣きながら体重をかけて首を絞めた。豚はひどく鳴いていたが、やがて鳴くのをやめた。まだ死んでいないはずなのに、抗う力もなくなり静かに僕に身を預けてきた。これまで毎日餌と水を与え、身体を洗い、糞尿を片付け、世話してきた豚だった。私に懐いている様子もあった気がする。近づくとこちらをじっと見つめていたし、小屋を片付けているときは離れ、餌をやる時には傍に寄ってきた。途中から、私が頭を撫でるまで餌を食べないで待っているという暗黙のルールが豚と僕の間でできていた。そして頭を撫でながら僕は言うのだ。「お前は死ぬことだけ考えていればいいんだ」
豚は死んだ。解体して
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