今夜は何を召し上がりたい?/木屋 亞万
 
していく過程でたくさんの血が出た。頭を取り、皮を剥ぎ、内臓を取り除き、骨と肉を切り分けた。血の一滴まで捨てずに済むようにし、食べられるところはすべて食べた。当初恐れていたほど、血への抵抗感はなく、泣きながら解体した肉が火にかけられ、火が通っていくにおいを嗅いだ途端、口の中によだれが溢れてきた。塩をかけただけでも、顎が落ちるほどうまい肉だった。

そんなことがあってから私はしばらく豚を食べていなかった。一生食べないでいい気がしていた。だが、秋が去りつつあり、いよいよ冬が始まるという頃になると、無性に豚が食べたくなるのだ。
特に冷え込みが酷い今夜は豚を塩焼きにして、泣きながらかじりつきたい気分なんだ。
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