孔/陽向
 
るだろう



漆黒な孔にはいつの日かの俤(おもかげ)が揺れている
君はそれを静かに見つめているけれど
ほんとうは恐くて目を逸らせられないんだ
君だけではないとは言えない君だけの俤

今は孔の無い方の片手を見つめてごらんとは言わない
もし見つめたとしても陰たちの囁きに怯えるだけだから
心の煩いが溶けて無くなるまで
片手に開いた小さな孔の様子を味わっておくのだ

味わっていると思想を俤に見抜かれ
動悸が若干激しくなった君は
凭れていた大きな木の幹を触り
混沌としている胸の内を撫で下ろした

大きな木の根に君は坐ると小声で呟いた
いつもみたいに生きていま
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