孔/陽向
 
います
君はそっと片手の小さな孔を撫でると
心の奥から大きな溜息を吐き救われたような表情を湛えて眠った



目が覚めると空に夕焼けが滲んでいた
君は服についている蟻を払い除けて立ち上がり
孔の開いた日から着々と前に進んでいる自分を確かに感じながら
大きな木から離れ草原を歩き家へ帰る

家に着いてからも片手の小さな孔の事を考える
まるで窓のようだと思った
こちらからは漆黒の孔として見えるが
その奥からは陰たちが君を見ているのだ

君は布団に身体を横たえた
その時に胸のあたりで何かが引き千切れる音がした
君は驚き 胸に手をあてる
すると片手の孔から何かの破片が出てきた

破片が出ると孔は塞がれていた
とても硬い石のような破片だった
君はそれを手の平に乗せると
迷いもなく口の中に入れ飲み込んだ



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