貴女は死、夜の眠り/凍月
れた
見つかってしまう事にではない
あの人の歌の邪魔をしてしまった事に
歌声は止まり
沈黙
そして
黒いフードがこちらを向いた
微かに見えた白い顔
心奪われる美貌は
残響も残らない歌より儚い
大きな目が瞬きをする
右肩だけをすぼめて
首を傾げるように頭の重さを乗せた
その仕草だけで
僕の血流は氾濫寸前となり
僕の心臓は破裂しそうになった
彼女は
−そう、女性みたいだ−
左手を挙げて
黒い袖から指先だけを出して
ひらひらと手を振った
僕はしばらく動けなかったが
我に返って頭を下げた
そして謝った
顔を上げると
いつの間にか彼女は僕の目
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