貴女は死、夜の眠り/凍月
さと輝きを持った歌
聞いただけで何故だか分かった
これは鎮魂歌だと
誰かが誰かに捧げて祈る
悲しい月光なのだと
見上げると
乱立する十字たちを背景に
一本の白く光る
斜めに突き刺さる長い十字架
それに腰掛けた
人の影
フード付きの黒ずくめの服を着た横顔
白い肌の鼻と口だけが見える
その唇から流れた鎮魂歌
両手は後ろにして身体を支え
すらりと伸びた黒い脚を
前後に揺らして歌っている
僕はただ、見とれていた
僕はただ、聴き惚れていた
そして、足を一歩踏み出した
足下の枝が折れる
乾ききった音………
僕は死にたくなった
僕は恐れた
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