職人とブタ/オダ カズヒコ
ードを
アクセルを少し緩めると
彼は再びヘルメットを脱ぎ
ぐうぐうと物凄いイビキを立てて眠り込んだ
目的の街に着いたのは
予定より遥かに遅かった
陽はとっくに暮れていたし
メインストリームの商店街のシャッターも
ほとんど閉まっていた
車を止めると僕は眠っているブタを担いで
知り合いの工場に向かった
油のしみついた店の壁と
乱雑に転がるいくつものコイルのある工場
施盤やボール盤 グライダーや金型などがあり
立てかけてある壁の試作品
「すまんが コイツを”溶接”してくれないか?」
僕は担いでいるブタを 背中で揺らしながら
知り合いの職人の男に頼み込んだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)