ナニカ/草野大悟2
 
てくることは間違いない。今の段階で上に報告することはためらわれた。本部には市や県の教育委員会に繋がりを持つ者も多い。そこから、事件着手前に情報が漏れてしまう危険性もある。しかし、いずれにしてもこのまま放置するわけにはいかない。悩んだ末倉岡は、悩んだ時いつもそうしているように、直属の上司である生活安全課長の田中警部に報告することに決めた。
 田中は、定年をあと一年後に控えた男で、決済印を押すだけの「オスマン田中」と、課員が陰口をたたいていることを倉岡はよく知っていた。しかし、彼が三○歳という若さで警部になったころは、将来県警を背負って立つ人材だと言われていたことまでは知らなかった。
 倉岡は、他
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