ナニカ/草野大悟2
、他の課員に聞かれないよう相談室に田中と入り、本件の強制捜査を強く主張した。田中は、賛成も反対もせず、ただ「そうか」とだけ答えて課長席に戻り、また決裁書類に印鑑を押し始めた。翌日、田中は昼過ぎになって出勤してきた。
そのまま何事もなく二日が過ぎた。決済印を押していた田中の卓上電話が鳴った。
「はい、生安課長の田中です。はい、はい、ええ。どうもお世話になりました」受話器を置いた田中が倉岡を見た。倉岡は課長席に行った。
「決まったぞ。今、本部長決裁が下りたそうだ。お前の案通り強制捜査で行くことになった。捜査体制もお前の案通りでいい。本部、署長、副署長、各課長には根回し済みだ」
田中は、無表
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