ナニカ/草野大悟2
津の腕にしがみつき、
「なんでなのよぉー、健一ぃー、なんでなのよぉー、こんな女とぉ、健一ぃー」
大声でそう叫び続けた。顔面は蒼白で、目は真っ赤に充血していた。右手には果物ナイフが握られていた。
「危ない!」、野津は、理沙の手を振りほどき救急車に乗り込んだ。
「殺してやるー、その女殺してやるー、健一ぃー、行かないでぇー、行かないでぇー健一ぃー」
理沙の心の奥底に潜んでいた『ナニカ』が、封印を食い破って現れた。
『ナニカ』は、救急車の周りを何回も何回もぐるぐると回りながら、あらん限りの大声で叫び続けていた。救急車の赤色灯が降りしきる粉雪に反射し、うす桃色の虹を作っていた。
『ナニ
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