ナニカ/草野大悟2
 
「部屋は何号室ですか?」
 隊長と思われる中年の男が訊いた。
「四○三号です」
 野津は、彼らの先に立って階段を駆け上がり、救急隊と共に部屋の中に入った。夏美は、白目をむいたまま、変わらず激しく小刻みな呼吸を続けていた。隊員は夏美の脈をとりながら、「大丈夫ですか? 大丈夫ですか?」何度も呼び掛けた。反応はなかった。
「ストレッチャーで下まで搬送する」
 隊長が指示を下した。三人は、手慣れた様子で夏美をストレッチャーに乗せ、階段を下ってマンションの出口に降りた。
粉雪が舞っていた。救急隊が夏美を救急車内に入れようとしたその時、髪を振り乱した女が現れた。理沙だった。理沙は、左手で野津の
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