ナニカ/草野大悟2
さい。あなたの住所とお名前をどうぞ」
野津は、夏美のマンションの住所と自分の名前を告げた。声は、夏美の年齢や病歴を訊き、「すぐ救急車を派遣します。サイレンが聞こえたら外に出て誘導して下さい」と言って電話を切った。
救急車の到着がとても遅く感じられた。その間も夏美は小刻みに荒い息を続けている。体は硬直し、顔面が赤い。長い時間がたったような気がした。サイレンが聞こえてきた。野津は急いで部屋を出て階段を駆け下り、マンションの外に出た。救急車が見えた。全身を使って自分の存在を知らせた。救急車が野津が立っている場所直前で止まった。
救急隊三人がストレッチャーを抱えて車から飛び出してきた。
「部
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