ナニカ/草野大悟2
 
せち料理をつまみながら辛口の日本酒を飲んだ。頬を染めた夏美を野津はベッドに誘った。電気ストーブのオレンジ色の灯りだけになった部屋で、ベッドに滑り込んできた夏美は、積極的に野津を求めた。野津もそのしなやかな体を思う存分抱いた。
 果てようとした瞬間、夏美が、突然、痙攣をおこし意識をなくした。呼吸は荒く、小刻みに続いた。これまでそんなことは一度だってなかった。パニック状態に陥りながら野津は震える手で一一九番をした。
「火事ですか? 救急ですか?」
 コンピュータ音のような声がした。
「い、意識がないんです。こ、呼吸がと、とても荒くて、急いで救急車を!」
「もしもし、もしもし、落ち着いて下さい
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