ナニカ/草野大悟2
 
か行くんだ」
「ええ、女子会でたまに」
「そお」
次の日、野津は、係の懇親会で少し遅くなる、と理沙に言って家を出た。いつもは鬱陶しいだけの朝の陽射しがやけに清々しく感じられ、そんな自分に驚きながら野津は、駅に急いだ。
 仕事は相変わらず忙しかったが、何とか午後一○時までには目途を付けて、夏美の案内で役所から歩いて一五分位のその店に着いた。
 店の名は『龍庵』といった。二階の個室に案内された。席につくと夏美が、「係長、生ビールでいいですか?」そう訊ねた。もちろん野津に異存はなかった。
 夏美は、大学時代入っていた新体操部の話、両親と妹の話、好きな俳優や映画、小説の話などを瞳を輝かせな
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