ナニカ/草野大悟2
せながら喋った。野津は、夏美が眩しくてもっぱら聞き役に回っていた。
「係長、奥さんの具合いかがですか?」
「ん? 具合って?」
「私、陰ながら心配してたんです、いつも。係長は毎日夜遅くまで仕事をされて、その間子どもさん達はどうしてるんだろう、とか、奥さんご飯ちゃんと食べてるんだろうか、とか、いろいろ」
「何で知ってるんだ、君」
野津が訊ねると、夏美は、一瞬ためらったようにガーネット色のワインを一口飲み、
「私、係長に憧れてるんです。だからもっと係長のこと知りたい、そう思ってブログとかよく覗くし。私が大学三年の時、小説で賞をお取りになりましたよね、それを読んでからずっと係長のファンだっ
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