ナニカ/草野大悟2
うによく話していた。
優太が一歳半になったばかりの夏、理沙は、二人目の子を産んだ。瞳の大きな女の子だった。そのころから理沙は次第に食事が摂れなり、寝込む日が多くなった。それで、野津がそのころ読んでいた小説「浪花少年探偵団」のヒロイン、「しのぶ先生」のような溌剌とした女の子に育つように、との願いを込めて、「しのぶ」と名付けた。
ある日曜日の昼下がり、リビングのソファにもたれて、テレビで国体の女子空手を見ていた野津の所にやって来たしのぶが、「お父さん、しのぶもできるよ」と言いざま右回し蹴りで野津の脛を蹴った。「おっ、凄いぞしのぶ」野津が褒めると、「あたしも空手やりたいよぉ、お父さん」めずらしく
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