ナニカ/草野大悟2
愛想に言って電話をつないだ。
「もしもし、野津です」
「野津くん、私」
「は? どなたですか?」
「もう忘れた? 私です、理沙です」
「理沙? 理沙? もしかして白石さん?」
「ええそう。あの、急いで相談したいことがあるんだけど、今、時間とれる?」
「今? ちょっと無理、仕事立て込んでて手放せないんだ」
「そ〜お、じゃ仕事終わってからじゃどう?」
「うーん、遅くなるかも」
「いいよ、遅くなっても」
「そう、六時ごろまた電話して」
「分かった、六時ね」
「うん」
「それじゃ、また」
受話器を握ったまま、野津はしばらく呆然としていた。左肩を叩かれた。驚いて振り向くと、そ
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