すがすがしさとはまた違う、小さな風が吹きさった屋上の物語/チャオ
 
けるべくして避けたはずの泥が、いつしか体中に張り巡らされ
誰かのための自分の体を捨ててしまおうと決意するのだ。
自分だ、自分だと叫びだした獣の心は、等しく欲求の泉にうち捨てられた、清純な夢の香りを帯びている。
まだ届かない。まだ見えない。もう届かない。

束縛された時間の扉を開いたとき、小さなため息が漏れる。誰にも聞こえないことを願いながら、ひっそりと普段着に着替える。

太陽の光は届かない。屋上にはみ出した熱は、風にさらわれて、冷たく体に突き刺さるだけだ。空を見上げることばかりを続けたくびは、少しだけ肩こりを生み出すだろう。そのわずかな変化を頼りに生きているのかもしれない。


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