小屋/草野大悟2
野太い声が響いた。声のした方を見ると、暗がりの中に坊主頭のがっしりした男の姿があった。
「あのう……表の貼り紙見て……」
「ああ、あれか。でもよぉ、おめえ中学生じゃねぇか」
「え、あ、あのう……高校、卒業したばっかっす」
「へぇ〜、マジかよ、それにしちゃ小ちゃいな」
「え、ええ……」
「ふう〜ん、ま、いいや。明日からでも来な」
その人が、ここの経営者の高村さんだった。
家に帰って、明日から百合ヶ丘ショー劇場で働くことになったから、そう両親にいったけれど、二人はほとんど興味なさそうに、そうかい、とだけ応えた。
次の日から毎日、掃除や、女たちの靴磨きや衣装運び、みんなの
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