小屋/草野大悟2
 

 大学にいきたいなら自分で稼いでいきな、そう両親からいわれていたけれど、僕は大学にいく気など、はなからなかった。
 就職も、どこがいいなど、希望めいたものはなかった。どこでもよかった。夢や希望や頑張りなどという言葉ほど僕から遠い所にある言葉はなかった。
 ある日の午前中、母親に頼まれた買い物をするため、「ゆりストア」まで商店街を歩いていると、その中ほどにある百合ヶ丘ショー劇場入口に、「従業員募集、高給優遇」、と手書きされた紙が貼られているのを見つけた。その貼り紙に吸い寄せられるように、僕はふらふらと劇場の中に入っていった。
「坊主、なんだ?」

[次のページ]
戻る   Point(1)