小屋/草野大悟2
 
った字の暑中見舞いを読みながら、手が震えるのが分かった。
 佐藤陽子が転校する……
 二学期からもう彼女の姿を見ることはできない。
 ショートカットのあのはじけるような笑顔と、くるくるとよく動く利発な瞳をもう見ることはできない。
 体中の力が抜けていった。

その後、僕は誰でも入れる高校に入学し、これまでどおり誰にも相手にされず、高校生活を過ごし、なんとなく卒業した。
 将来、何になりたいとか、夢に向かって頑張るとか、そんなことは僕には無関係だった。 万が一、何かに関心を持ったとしても、僕に夢を叶えることなどできるはずがない、と思っていたし、叶えるべき夢なんかぜんぜんなかった。
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