小屋/草野大悟2
というよく通る声が響き、彼女がつま先立ちで競技スペースのマットの上を歩いてきて、ポーズをとった。彼女は濃紺のレオタードを着ていた。色白の彼女に、それはとてもよく似合っていた。
(ガンバレ、陽子、ガンバレ)
どきどきしながら、こっそりと胸の奥で叫んだ。
音楽が流れ出した。それは、どこかで聴いたことのあるアップテンポの激しい曲だった。何だったっけ。思い出せない。
彼女の操るリボンは、波のように、風のように彼女の体の一部となって自在に、優雅に舞った。彼女は、演技が楽しくてしようがない、というように満面の笑みを浮かべ、何度回ってもターンの軸はぶれず、全身から光を発していた。
伸びや
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