小屋/草野大悟2
 
びやかなその演技に、会場全体がすっかり魅せられていることが、僕にでも分かった。
 僕もすっかり引き込まれ、マットの上を自由に跳びはねる彼女を一心に目で追っていた。 水平に投げられたリボンの柄が、引き戻されて剣のように彼女の手元に戻ったとき、あっ、と思った。剣の舞だ。夏休み直前の音楽の授業で聴いたばかりだった。
 演技が終了したとき、僕は思わず拍手をしていた。彼女はにこにこしながら客席の一点を見つめ、手を振っていた。そこには、母親らしい女の人と白い顔をした女の子が、満面の笑顔で拍手を送っていた。
 得点がボードに掲示されると、会場から一斉に「お〜っ」という声が洩れた。それで僕にもかなりの高得点
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