小屋/草野大悟2
 
ないことが、僕なんかに分かるはずないよ」
 そういった時、彼女が怒ったような顔になった。
 彼女は、急に無口になって、学生カバンの中からセロリや人参を取り出し、ウサギたちに食べさせた。そして、ふいに僕の目をまっすぐ見つめて、はっきりと、こういった。
「陽子ね、『僕なんか』とかいう人、嫌いだな。中村くん、なんでそんなこというの?」
「え、えっ、あ……」
(だって僕は、成績も最悪だし、運動だってまったくできないし、小さいし、得意なことなんて何にもないし、みんなから完全にシカトされてるし……)
言葉にならなかった。
「ごめん、また見せてね」
 そういい残して、彼女は「ウサギ小屋」を
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