アマガエル/イナエ
 
けて地中に潜り 樹根の間で幾度もの冬を耐え
年々狭まる地上の出口を見つけ出して
酷暑化する夏を 更に暑く
悲壮なまでに雌を呼び
深まる秋
ひとり 冬を越す辛さに
アリに物乞いして追い返された蝉であったと

   過去作です。 連作「アマガエル」の1 詩集「孤老 されど」から      


2  面・白いアマガエル

ここは いなか
近くに水田も有り水場もあるというのに
立て込んだ分譲住宅に
居着いた物好きなアマガエル
鳴き声は大きくもなく五月蠅くもなく
なまめかしくも無かったけれど
近づく降雨の予報にはなった

紫陽花の葉の上で羽虫を狙い 
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