アマガエル/イナエ
ベランダによじ登って星を眺め
壁にへばりついて保護色を楽しむなど
猫の手を逃れ モズの餌食にもならず
独身生活を楽しんでいる
3 冬眠中につき
晴れ上がった白い朝
雪に溺れた家のベランダは
乱反射する硬い光があふれていたが
鉢植えの皐月は窮屈そうだった
撓んだ枝をそっと抜き出し
一つ一つの植木鉢 移動をはじめて
見つけてしまった
鉢穴からこぼれ出た黒い土の上に
ぺたんと張り付いた白い雨蛙
雪に合わせて白くなったか
寒さに血の気も失せたのか
だが 死んではいない
足をわずかに動かして
冬眠中だと合図をよこす
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)