境/永乃ゆち
 
室にいた。
さっきまで見ていた、あの明るい病室だ。

『タカちゃん。。。』

消えそうな声でそう言うと、夫は

『良かった。。。良かった。。。』

と繰り返して泣いた。



そうだ。私は。。。ビルの屋上から飛び降りたんだ。。。
精神を病んでいて薬が手放せない私は
子を産む事も諦めなければならなく
絶望していた。

それが理由かと聞かれたら、それだけではないような気もする。
心を病んだ私と一緒では、夫がかわいそうだ。
夫にはもっとふさわしい女性がいるはずだ。
子を産める女性が。。。

いろんな事を考え、袋小路に迷い込み
突発的に飛び降りたのだ。

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