境/永乃ゆち
 


けれど。泣き叫んでいる夫を見た時
自分のしたことの残酷さをはじめて理解し
夫と一緒に生きたいという思いが強く強く沸き起こったのだ。


私の体には何本ものチューブが繋がれており
酸素マスクをしていた。
ICUにいると夫は言った。

それからすぐに私はまた気を失った。


次に目が覚めた時は、個室に移されていた。
個室に戻ってからもいろんな薬剤の点滴や輸血をしていた。
実家の母が完全介護で付き添ってくれた。
下半身を粉砕骨折しお腹には四本の長いボルトが骨盤を固定する為
刺さったままだった。起き上がる事もできない。

足の感覚は全くなかった。動かそうと思っても
[次のページ]
戻る   Point(2)