梅雨晴間/月形半分子
 
三日ほど晴れ間がのぞく。アスファルトも雲もからりと乾いて、何処かで鴎が死んでいることなど忘れてしまう。海も乾いているだろうか。網にかかった魚たちを引いて、船が銀のスプーンのように 滑らかに海をゆく。まるでそこにあるのが水ではなく沈黙であるかのようだ。

塵のように鳥が飛びさっていってしまったあと、修理屋の庭はいっきに密度を深め、虫も動物も羽のないものから順に発情期が訪れる始める。地中はもう乾いただろうか。愛しい無政府主義のミミズたちよ。民主主義など欲しがるものは人間だけだと、笑う蟻たちよ。長いあいだ雨が続いた後 三日ほど晴れたので、誰もが明日のことなど分からなくなってしまった。

海が
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