梅雨晴間/月形半分子
 
海が波をおこして自らの錯覚をふりほどく。そうして海が自分を取り戻す頃、ラジエーターを壊した一台の車が修理屋の親父のもとにやって来る。息子は小銭を使い果たしたというのにまだ帰ろうとはしない。明日のことは分からずとも、また、雨はふるのだ。無政府主義のミミズたちよ。庭からはやがて羽のあるものから消えていくのだろう。蟻はいつかの軍国主義には理解を示しただろうか。

アスファルトも雲もからりと乾いて気持ちいい風がふいてくる。いまだに乾かぬものに向かって。
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