顔の無い人たちの憂鬱/opus
 
立ち止まり、
そこの芝生を
クンクン
クンクン

二人はもちろん気付いて、
こちらを伺っている
僕はとてもじゃないけど、
そちらに目を向けられない

ほら、あっちへ行くよと
首輪に繋がれた紐を引っ張るが
動こうとしない
いや、動かないのであれば
そっちの方がまだ良かった

次の瞬間、
犬はゴロンと寝転がり、
腹を見せ、
地面に背中を擦り付けたのだ!!

もちろん、
二人は驚いている!!
驚いている気配がある!!
犬は背中を擦り付けながら、
尻を振る!!

僕はテンパる
テンパった末に、
あろうことか、
犬の名前を呼んでしまった!!
いや
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