宮澤賢治に寄せて/嘉村奈緒
 
、二疋とも
吠えてこっちへかけてくる
(夜明けのひのきは心象のそら)
頭を下げることは犬の常套だ
尾をふることはこわくない
それだのに
なぜさう本気に吠えるのだ
その薄明の二疋の犬
一ぴきは灰色錫
一ぴきの尾は茶の草穂
うしろへまはつてうなつてゐる
わたくしの歩きかたは不正でない
それは犬の中の狼のキメラがこわいのと
もひとつはさしつかえないため
犬は薄明に溶解する
うなりの尖端にはエレキもある

 これもなかなか好きな詩です。普通にシチュエーションとしては怖いものです。吠えてかけてきてるなんて!!なのに普通に次の行に「夜明けのひのきは心象のそら」とか書かれても
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