筋肉賛歌/片野晃司
きつれ、ひねくれ、こねくりまわし、握り潰した指のすきまをすいすいと泳いでいくメダカたち、その一尾のメダカはわたし。何度も叩きつける靴底の迷路できらきらとひらめくユスリカたち、その一羽のユスリカはわたし。打ち捨てられた漁具の陰をひんやりと潜り抜けて、砂浜からホップ、ステップ、ハマヒルガオ、さらさらと走っていく砂つぶのそのひとつぶひとつぶはあの日々の楽しみ、あの握りこぶしほどの小さな山々はあの日々の悲しみ、あのトンネルへカーブしていく海沿いの道はあの日々の喜び、わたしのあの日々のすべてがこの地勢に逐一符合して、あの崖の地層の白黒の縞々、その縞々が皺立って、つまさきでつっかけて、つんのめって浮き上がり、
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