筋肉賛歌/片野晃司
 
り、南風燃え上がり、空青くみどりの球体、朝は昼、夜は星々、そして脳はどこまでも膨張し拡散し、いくつか戦いがあって、ぼんやりとふわふわなあわあわになって、そこから一気に筋肉はぎゅんぎゅん収縮、ホップ、ステップ、ハマカンゾウ、ありがとう筋肉、背丈より低い峠を、一歩よりも細いせせらぎを、袖よりも短いトンネルを、指先よりも細い道を、ほら、あのランナーはわたし、あの皮膚、あの筋肉、あの骨格、深い草むらの下を、湿った苔の下を、きらきらしい砂つぶのすきまを、ありがとう筋肉、南風燃え上がり、ほら、あのランナーはわたし。花々の茎と茎との間を抜けて、海沿いの道のカーブを駆けて、トンネルへ、そしてその先はカーブ。朝から昼、昼から夜。春から夏、夏から秋、どこまでも膨張していき、そこからいくつも事象が欠落していく、あのおそろしい、おそろしいところまで走っていって、そこから全力で戻ってくる。



hotel第二章No32 2013年6月


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