泣き虫フーガ/村田 活彦
 
争が長引くにつれて、
兵士たちは小さな箱になってふるさとに戻って来た。
新しい名前が刻まれたお墓の前で
フーガは毎日泣き暮らした。

戦況はさらに悪くなり、
小さな港町にも敵の飛行機が飛んでくるようになった。
泣き声が敵の標的にされるのを恐れた町の人たちは、
フーガを役場の地下室に閉じ込めてしまった。

ある日、水平線の向こうに小さな影が見えたかと思うと、
それがあっという間に何十機もの爆撃機になり、
小さな町の上空をおおいつくした。
黒い鉄の鳥から鉛の雨が降りそそぎ、
町はまたたく間に炎に包まれた。

竜舌蘭に火がついた。
麓の一本杉も燃えあがった。
屋根もア
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