泣き虫フーガ/村田 活彦
ーガは涙と鼻水で顔じゅうべたべたにしながら
「ありがとう」と言った。
それからというもの、
どこに出かけるにもそのタオルと一緒だった。
大きなタオルを肩にかけて引きずって歩く姿は、
まるで王様のマントのようだった。
ある雨の日、フーガが公園を通りかかると、
恋人と別れた女のひとが濡れながら泣いていた
フーガは傘を差し出すと、
彼女のとなりでもらい泣きをはじめた。
まるで雨だか涙だかわからない有様だった。
タオルのマントもびしょ濡れになった。
女のひとはすっかり驚いて、
一所懸命なぐさめているうちに、
自分が泣いていたことを忘れてしまった。
青年になったフー
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