泣き虫フーガ/村田 活彦
父親は医者に相談したが
「大きくなれば治りますよ」と笑って帰された。
夜も昼もわんわん泣くので両親は寝不足になったが、
あまりに毎日のことなので
そのうちに耳がなれてしまった。
物心つくようになっても、
フーガの泣き虫は治らなかった。
巣から落ちたひな鳥をひろっては泣きじゃくり、
丘のうえから海に沈む夕日を眺めては目をうるませた。
その頃には、町のひとたちも慣れっこになり
「ああ、またフーガが泣いてるねえ」
「今日もいい日だねえ」などと笑いあった
泣いてばかりいる息子のために、
両親は家中のタオルを縫い合わせて
一枚の大きなタオルを作ってやった。
フーガ
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