水宇宙/岡部淳太郎
 

四十六億個の水の分子がいっせいに
滴り落ちる。 。 。

と、

四十六億年の間に渡って
地上に雨が降り注ぎ
宇宙では
四十六億年ぶりに
川が氾濫を止め
清らかに流れ始める

信じられないかもしれないが
宇宙は水で出来ている
宇宙の中心に
たったひとつの水瓶があり
宇宙の各所で
ひたすら
大きくて小さな 物語を
待ちつづけているいのちたちは
巨大な水の一群となって
そこに向かって
滴り落ちる。 。 。
ために
その身を固く引きしめている

宇宙は水で出来ている
信じなくても良いのだが
宇宙の中を
ただひとつであり無限の種類である水が

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