メアリーからの手紙/村田 活彦
 
し神様になりたかった猿がいました
10万年かけて風から黄金を得ようとしました
10万年かけて土から光を得ようとしました
もちろんいっこうに神様には進化しないのでした


猿は二本足で彷徨いました
「我々はどこからきたのか どこへいくのか」
氷の船で月にも行きました  だけど答はみつかりません
「どこで間違えたのか 光を目指したはずなのに」
抱えすぎた悪夢を棺に閉じ込めて
地層深く埋めることにしました
棺の中から声がしました
「タダ生キルダケデ良カッタノニ」

雨の音に耳をすましてごらんなさい
頭蓋の奥から尽きない問いが這い出してくるでしょう
私が伝えるのはおとぎ話
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