かなしめ十円/
 
の休憩所のひとつで、おとこのたばこの煙が連れて行かれる。聖餅の色をしたそれとおとこは触れ合っている。おとこは決して気づかないだろう。何度か頭を掻いて、作業服の肩に乗ったふけを払っておとこは生活に戻る。
 なるだけ安らげる場所を探している。少し寝息が響いても安心のできる場所を。そして誰にも妬むことのなく、何ものも、それらを覚えていることのない場所を。しかし見えてくる海はとても広くって、おそろしかった。無数の太陽が乱反射して、からだの隅々までを反転させてしまって、黒ずませてしまう。無数の太陽はこわい。きらきらしている内に燃えていく姿を幻視してしまう。うんざりだった。なにもかもが、それを伴ってしか現れ
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