あの日覗き込んだ照準器の十字架Destiny/北街かな
 
撃銃を僕はだめもとで空に向けた。庭の土に片膝をついて銃床を頬に当て空を睨む。目標は空でビリビリリ叫びながら紙吹雪を吐き散らすヘリのうちのたったひとつ、ピンク色で猫耳を生やしている美しい機体だ。

 何故それを狙おうとしたのか、はっきりした理由があったわけじゃないんだ。
 誰かを好きになるってそういうことじゃないのかな。

 僕はおもいきり良く射撃してやった。ズッダーンピキヒュインが山頂にまで轟いた。
 ターゲット・ヘリは「キャー」と被弾音を上げて姿勢を崩し、扇風機のように回転しながら地上へと墜落した。
 山奥で燃え上がっていた猫耳ヘリから僕は操縦者の左腕に当たる部分を乱暴に引っ張り出
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