ある雨の憧憬/涙(ルイ)
 

     ならばもしも 僕が先に死んでしまっても
     君は生きていてくれるんだね
     生きて 僕を思い出してくれるために
    

     そう云おうとして僕は 言葉に詰まった
     君があんまりキレイに笑うものだから
     僕はそれ以上 何も云うことができなかったんだ




それから1ヵ月後の
ある雨の昼下がり
君は新宿のど真ん中のビルの屋上から
飛降りて死んだ


死因はわからない
遺書も残っていない


ただ君が死んだ、という事実だけを
僕のこの胸の中に 強く重たく置き去りにして


ひとりでさっさといなくなっ
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